2006 年 37 巻 6 号 p. 437-448
本研究は,病院内の不快なにおいを明らかにし,有効な臭気対策を立てるための基礎データを得ることを目的とした.2施設の看護職員254名および1施設の看護職以外の病院職員135名に対する意識調査と高齢者施設に関する既往研究結果との比較考察を行い,次のような結果が得られた.
看護職員の79.1%,その他の職員の44.4%が病院内のにおいを気にしていた.においの気になる場所は病室,病棟,汚物室,トイレが主であり,気になるにおいの種類は排泄物臭が一番多く,その他に体臭,薬品臭,食べ物臭,タバコ臭,腐敗臭などがあった.特に古い建物では排泄物臭以外のにおいを感じる割合が増え,においの染み付きや複合臭が不快なにおいの要因と考えられた.一時的に強いにおいを発生し不快なにおいの代表である便臭の拡散を制御することと常時気になるにおいとして感じる尿臭と複合臭の制御が快適な病院環境の提供に重要であると示唆された.また,臭気の問題があるとされる病室,便所,汚物室,病棟において,高齢者施設より病院の方が臭気強度,不快度ともに強く不快な結果を示し,高齢者施設以上に臭気対策の必要性が示唆された.