日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
医学と医療の最前線
多発性骨髄腫に対する分子標的療法
飯田 真介
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 99 巻 1 号 p. 142-149

詳細
抄録

難治性の形質細胞腫瘍である多発性骨髄腫患者の治療は,生存期間延長という観点からみるとメルファラン+プレドニゾン(MP)療法の開発以来40年近く進歩がみられなかった.しかしサリドマイド,レナリドミド,ボルテゾミブの登場により再び大きな進歩が訪れようとしている.いずれの薬剤も骨髄腫細胞に対するアポトーシス誘導効果のみでなく,骨髄微小環境をも治療標的としている点が特徴である.これらの新規薬剤によって再発・再燃患者の生存期間中央値が1年以上延長しただけでなく,最近では高齢の未治療患者に対してもMP療法と新規薬剤の併用によって,若年患者に対する大量メルファラン療法に匹敵する高い完全奏効割合が得られるようになった.また化学療法剤のみでは極めて予後不良であったt(4;14)/t(14;16)転座陽性病型に対しても,新規薬剤の高い治療効果が報告されつつある.今後は,本邦においても骨髄腫患者の年齢や病型に応じた新たな至適治療法を確立する必要がある.

著者関連情報
© 2010 一般社団法人 日本内科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top