日本内科学会雑誌
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長期生存しえた完全大血管転位症の1剖検例
海渡 健藤巻 博松尾 敏一下条 貞友酒井 紀宮原 正
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1986 年 75 巻 12 号 p. 1746-1750

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抄録

著明なチアノーゼ,多血症を伴いながら, 23年間生存した完全大血管転位症(TGA)を経験した.症例は右不全片麻痺,失語を主訴とし,多血症(Ht 75%)による脳血栓が疑われ,入院時血小板減少や高度蛋白尿などを合併していた.潟血,脳圧降下薬投与を行なつていたが,脳ヘルニアを併発し死亡した.剖検ではASD, VSDを伴うTGA III型,肺動脈弁の疣ぜい状石灰化,直径約50mmの脳膿瘍,腎糸球体の結節状硬化病変などが認められた. TGAの予後は極めて不良で,非手術例では生後1年以内に約90%が死亡すると言われている.本例は長期生存し,臨床的に興味ある病像を合併していたので,これらの問題点を考察した.

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