日本内科学会雑誌
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ネフロ一ゼ症候群を伴うsystemic lupus erythematosusの臨床像と長期予後に及ぼす免疫抑制剤の治療効果について
橋本 博史津田 裕士高崎 芳成塩川 優一
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1984 年 73 巻 5 号 p. 606-613

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抄録

全身性エリテマトーデス(SLE)の腎病変の中で,最も予後不良の臨床病態はネフローゼ症候群(ネ群)である.全身性疾患としてのSLEからみて,この臨床病態の特徴を知るとともに,免疫抑制剤,特にアザチオプリン(AZ)の長期予後に及ぼす治療効果について検討した. SLE379例を検討の対象とし,ネ群を伴うSLE(105例),ネ群を伴わないループス腎炎(222例),非腎症SLE(52例)の3群に区分し,臨床像,検査所見,死因,予後を比較検討した.また, AZ72カ月投与例7例について,長期投与による治療効果を検討した.ネ群を伴うSLEは,他群に比べ有意に予後不良で,その臨床的特微は,より若年者に多く,精神症状,髄液異常を示す症例が多く,反面,レイノー現象は有意に少ない また,尿異常所見,腎機能障害の他, LDH高値,血清低補体価を認める症例が有意に多く,腎生検では,び漫性増殖性糸球体腎炎,膜性増殖性糸球体腎炎を示す症例が多い,他方,高γ-グロブリン血症は有意に少ない.合併症では,感染症と脳血管障害が有意に多いが,死因では腎不全が最も多い.免疫抑制剤使用例は,ステロイド単独初回多量投与した症例よりも有意に予後良好であつた. AZとステロイドの長期併用治療効果をみると,ル一プス腎炎の再燃はみられず,蛋白尿,血清低補体価に対して有意の改善が認められた.

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