日本内科学会雑誌
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過酸症を呈したMenétrier病の1例
大草 敏史山岡 昌之中野 冬彦坂本 保己光永 慶吉宮崎 龍之輔桃井 宏直
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1982 年 71 巻 11 号 p. 1581-1585

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抄録

最近,我々は,過酸症を伴つたMenétrier病の1例という極めて希な症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.症例. 59才,男.主訴:全身浮腫.家族歴:母,兄,弟,高血圧.既往歴: 39才高血圧.現病歴:昭和53年胃透視にて胃巨大雛襞を指摘され,昭和54年12月顔面浮腫さらに2カ月後全身浮腫出現し当院入院.入院時現症:全身浮腫あり.入院時検査成績:総蛋白4.6g/dlと減少,蛋白分画正常.胃透視および内視鏡にて,びらん,潰瘍を伴う脳回状の胃巨大雛襞を認め,生検組織診は慢性胃炎.小腸,大腸異常なし.胃液検査では過酸を呈し, 131I-PVP試験では糞中排泄量3.4%と増加, RISA試験では血中半減期1日と短縮し胃液中への蛋白喪失が考えられた.抗プラスミン薬投与を行なつたが無効.昭和55年12月胃全摘施行.摘除胃組織所見は固有胃腺と腺窩上皮の過形成が見られMenétrier病と一致.胃全摘後血清蛋白改善.本症は一般に低酸の症例が多く,本例の如く過酸を呈することは極めて希である.過去10年内外報告70例中過酸例は7例のみであり,組織像は本例と同様,すべて固有胃腺の増生を示しており,固有胃腺の増生と過酸の間には何らかの因果関係のあることが推察された.

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