日本内科学会雑誌
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原発性後天性無γ-グロブリン血症に若年性粘液水腫が合併した1症例
斉藤 博小松 文夫松田 美枝子三輪 俊博稲月 文明阿部 恒男
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1974 年 63 巻 7 号 p. 643-650

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抄録

近年免疫学の進歩とともに,免疫不全症,自己免疫疾患およびリンパ系悪性腫瘍の共存が注目されてきた.われわれは無γ-グロブリン血症に粘液水腫を合併し,種々な免疫学的異常を呈した症例を経験したので報告する.症例は18才の女子,母親は5年前に甲状腺機能亢進症により甲状腺亜全摘を受けている.患者は4才頃より感染症を繰り返すようになつた. 5才で一時的な甲状腺機能亢進様症状が出現し, 10才で甲状腺腫を指摘され, 13才で後天性特発性無γ-グロブリン血症と診断された. 17才で易感染性,小児様顔貌,発育遅延および第二次性徴欠如などを主訴として当科に入院した.免疫グロブリンの著明な低下と, IgG抗原活性の欠如が認められ,しかも細胞性免疫の軽度低下がみられた.甲状腺機能は著しく低下し,甲状腺腫はなく,血中甲状腺自己抗体は,タンニン酸処理赤血球凝集反応および補体結合反応のいずれも陰性であつた.甲状腺生検像では,リンパ球浸潤,胚中心の形成および線維組織の増生が著明にみられた.経過は,甲状腺ホルモン補充療法により甲状腺機能はかなり回復し,それとともに,成長の促進や月経の出現がみられた.同時に脾腫が生じた.一方γ-グロブリン補充療法により,感染の繰り返しはなくなつた.

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