日本内科学会雑誌
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聴原性てんかんの1例
中尾 喜久赤沼 安夫大久保 昭行椿 忠雄
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1965 年 53 巻 11 号 p. 1461-1467

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抄録

自動車,電車の音等機械音により誘発される聴原性てんかんの症例について報告した.患者は16才の男子.幼時熱性疾患に罹患した以外には既往歴,家族歴ともに特別のことはない.約3年前より騒音の強い場所にいると耳鳴に惱むようになり,その翌年より早朝4時半頃のてんかん発作,ならびに自動車,電車の警笛やエンジンの音で激しい耳鳴を誘発し,次いでてんかん発作をみるようになった. diphenylliydantoin, trimethadioneの効果は余り認められなかった.理学的所見,腦血管写,気腦写,髄液所見,聴力検査,前庭機能検査等に異常はなかつたが,腦波には興味ある知見を得た.すなわち種々の音刺激を行なうと,それに一致して全誘導でmultiple spikes and waveが現われ,純音刺激では500c/sで最も敏感であり,80db,100c/sより2000c/sの範囲において異常波を証明できた.棘波の電位は両側中心回領域で最も大きかつたが左右差は明瞭ではなかつた.本症の成因に関して幼時の熱性疾患がいかなる役割を演じているかは不明である,また本例ではdiphenylhydan-toin, trivsethadianeの副作用と思われる小腦症状,肝脾腫がみられた.

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