日本内科学会雑誌
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糖尿病患者の病態とくに動脈硬化症と血中insulin様活性
山田 弘三柴田 昌雄小出 忠孝青山 克巳久野 勉
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1964 年 52 巻 10 号 p. 1200-1205

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抄録

糖尿病において血中insulin活性(ILAと略す)を研究することは最も本質的な問題である.わたくし共は102名の糖尿病者のILAを下垂体・副腎剔出ラットに対する抽出insulin fractionの血糖降下作用を利用するin vivo法により測定し,糖尿病の病態,特に動脈硬化症との関係について研究した.糖尿病者のILAは正常人とほゞ同様の高い活性値より,測定不能の低値に至るまで広く分布する.若年性,重症,やせ型,病歴の長い糖尿病は,壮年性,軽症,肥満型,病歴の短ひい糖尿病に比し血中ILAは低い.血管合併症を有する糖尿病は合併症のない糖尿病に比し,血中ILAの低下を認め,合併症の頻度が増す程低下する傾向を認める.血管合併症を有する群の中て、脂質代謝異常群は正常群よりILAの低い傾向を認める.以上わたくし共の測定法によるILAは糖尿病の臨床像と密接な関係を有しており,特に血管合併症の発症ないしは進展にかんしてinsulinが直接あるいは間接に重要な役割を演じていることを示唆する.

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