1962 年 51 巻 8 号 p. 1049-1058
Insulin分泌における視床下部の意義を検索するため,犬を用い,視床下部電気刺激の際の上膵十二指腸静脈血漿insulin濃度の変動を下垂体副腎髄質剔出ラット法で測定することにより追究した.視床下部刺激29例中9例にて刺激直後一過性のinsulin濃度上昇が出現(うち3例では軽度), 1例にてはやゝおくれて上昇がみられた. insulin濃度上昇例は外側視床下部刺激群に多かつた.つぎに視床下部に電気焼灼破壊巣を生ぜしめた犬に対し,ブドウ糖静注負荷後のinsulin追加分泌の有無を検索した. 15例中3例では正常の追加分泌は消失, 3例ではその減少がみられた.これに対し,下垂体剔除犬4例においては糖負荷後のinsulin追加分泌は健常犬と同様にみとめられた.したがつて,糖負荷後のinsulin分泌増大機序にとつて視床下部は何等かの意義を有すると考えられるが,下垂体の存在は不可欠ではないであろうと結論される.