日本内科学会雑誌
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滲濾出液の臨床的研究胸水, 腹水中の赤血球沈降
秋城 和人
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1959 年 48 巻 2 号 p. 235-242

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抄録

滲濾出液の性質を鑑別することは各種の検査方法を用いても必ずしも容易でない. 滲濾出の発生機転よりして, 両者になんらかの差異があるべきことが考えられる. 種々なる疾患に由来する滲濾出液 (胸水37例, 腹水24例) に健康人O型洗滌赤血球を加え, その沈降速度および沈降状態を観察し滲濾出液の鑑別の一助となる所見を得たので報告する. 結核性滲出液中赤沈は1時間値が15mm以上で, 沈降にさいして上澄と赤血球との境界面は不鮮明で, 赤血球の大きい集積塊を生成するが, 癌性滲出液および, 非炎症性濾出液中赤沈は1時間値が10mm以下で15mm以上のものは1例もなく, 沈降にさいしての境界面の状態は鮮明で, 赤血球の集積塊は非常に小さいか, または, ほとんど認められない. なお, 結核性滲出液中赤沈は臨床症状の改善により赤沈値は低く, 赤血球の集積塊も小さくなる傾向がみられる--結核性液中には赤沈促進因子, または, 赤血球集積塊生成因子が存在し, 炎症の状態とともに変動するものゝごとく思われる.

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