日本内科学会雑誌
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合成甲状腺ホルモソ剤(T4)にて薬物性肝障害をきたした橋本病の1例
乾 明夫石川 和夫水野 信彦老籾 宗忠馬場 茂明
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1983 年 72 巻 10 号 p. 1407-1413

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抄録

症例は63才,主婦.浮腫を主訴として来院.甲状腺機能低下症の診断の下に, thyroxine (T4) 50μg/日投与が開始された.入院時検査ではmicrosome test, thyroid test強陽性, T3とT4共に低値, TSH高値で甲状腺組織所見とあわせ,橋本病と診断した. T4開始後12日目に発熱,発疹,肝障害が出現し, T4中止にてすみやかに消退した.さらに,再投与にて黄疸を伴う肝障害が出現し, T4添加リンパ球幼若化試験(LST)は陽性を示し, T4によるアレルギー性肝障害と診断した.入院中,偶然発見した早期胃癌と無症状性の総胆管結石,慢性胆嚢炎のため切除術を施行した.術後甲状腺機能低下が著しく, T3にて補償療法を開始したが,約14ヵ月経過した現在も肝障害は出現していない.本症例の肝障害発現機序に関しては,細胞性免疫の関与が考えられるが,その他の要因については必らずしも明らかではない.とくに,橋本病との関連や慢性胆嚢炎の関与が想定され,また新たな腫瘍随伴症候群としての可能性も否定しえないと思われた.

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