分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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日本の農耕地土壌の全粒径及び細砂画分の元素組成による土壌大群の推定と地理的起源のスクリーニング
伊藤 遼矢内 純太中尾 淳
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2017 年 66 巻 8 号 p. 547-555

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抄録

土壌試料の地理的起源の推定を目的として,全国から採取された120点の農耕地土壌試料について,全粒径(<2 mm)及び細砂画分(0.02~0.2 mm)の元素組成を測定した.各試料は湿式分解を行い,Al,Fe,Ca,Mg,Ti,Mn,Ni,P,V,Zn,Cuを誘導結合プラズマ原子発光分析法(ICP-AES)で,Kを原子吸光光度計で測定した.Si,Oは試料重量から他元素量を差し引くことで求めた.造岩鉱物を反映する細砂画分の元素組成を用いた主成分分析と判別分析から,全試料の70% の土壌大群を正しく識別できた.これは全粒径(<2 mm)を用いた際の62% よりも高かった.生成過程より異地性物質の混入が考えられる黒ボク土や泥炭土の判別率が低かったが,その他はおおむね良好であった.以上の結果,細砂画分の元素組成から土壌大群を識別し,その分布域と照合することで,土壌試料の地理的起源の推定が十分可能であると結論された.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2017
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