分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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沖縄島沿岸の海水中で光化学的に生成する過酸化物
中島 仁美岡田 孝一郎藤村 弘行新垣 雄光棚原 朗
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2004 年 53 巻 9 号 p. 891-897

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抄録

沖縄島沿岸で採取した海水中で光化学的に生成する過酸化物を太陽光シミュレーターを用いて調べた.海水中で光化学反応により生成する過酸化水素の生成速度には一定のものと,減少していく2つのタイプが見られたが,有機過酸化物の光生成は見られなかった.沖縄の夏の太陽光強度に規格化した過酸化水素の光生成速度は,平均1.38±0.80 nM min-1であった.過酸化水素の光生成初速度と溶存鉄イオン濃度及び300 nmにおける吸光度には,強い相関が見られたが,溶存有機炭素(DOC)濃度との相関は弱かった.海水中での過酸化水素の光生成に溶存有機化合物が関与していることはよく知られているが,溶存有機化合物濃度の指標となるDOC濃度との相関が弱かったことから,溶存している有機化合物の組成によって過酸化水素の光生成速度が異なることが示唆された.また,陸由来の成分が過酸化水素の光生成に関与していることが明らかになった.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2004
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