2003 年 52 巻 9 号 p. 719-724
本研究では,飲料水中に含まれる微量アルミニウムの分離定量法の開発を目的として,5-スルホ-8-キノリノール(HQS)を錯形成試薬として用いた逆相イオン対HPLCについて諸条件の検討を行った.Al-HQS錯体の保持に及ぼす溶離液組成の影響を調べた結果に基づいて,分離度,分析時間,ピーク対称性から溶離液組成を決定した.溶離液にはAl-HQS錯体の分解を抑制するためにHQSを0.3 mM添加した.検出波長254 nm,試料注入量100 μlにおけるAl-HQS錯体の検量線は,0.5 ppbから100 ppbの範囲で良好な直線関係を示し,検出限界は0.05 ppbであった.操作をすべてクラス100のクリーンルームで行ったことで実験室環境からのアルミニウム汚染を最大限に排除し,非常に高精度なアルミニウムの定量が可能となった.また,水道水及び市販のミネラルウォーター中のアルミニウムの定量を行ったところ,絶対検量線法及び標準添加法いずれによってもほぼ一致した値が得られ,本法を用いることにより飲料水中のアルミニウムの定量が可能であることが明らかになった.