分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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亜鉛(II)とアニオン性ポルフィリンの錯生成を指示反応とする微量カドミウム(II)の吸光光度定量
渡辺 邦洋岡島 亜起子四反田 功板垣 昌幸
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2010 年 59 巻 7 号 p. 589-595

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抄録

ポルフィリンとカドミウムの反応の利用は高感度定量が可能であるが,他元素の妨害があり,特に亜鉛や鉛の妨害が著しい.そのため,これらの元素の妨害除去法について検討を行った.亜鉛の妨害はポルフィリンに特有な金属置換反応を利用し除去した.鉛の妨害の除去にはグッド緩衝剤と金属との錯形成能に注目し,数種のグッド緩衝剤の中からビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis-Tris)が鉛に対して選択的な反応をすることを見いだし,その反応を利用した.これらの妨害除去法を取り入れたカドミウムの定量は,バッチ法で行われた.カドミウムを含む試料溶液に亜鉛溶液,5,10,15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィンテトラスルホン酸(TPPS)溶液,Bis-Trisを加えpH調整し,5分間反応させた.結果として,検量線はカドミウム濃度0~100 ppbの範囲で相関係数0.998の良好な直線となり,定量下限は4.8 ppb,検出限界は1.6 ppb(S/N=3),相対標準偏差は1.4%(Cd 10 ppb,n=7)であった.更に,亜鉛は2 ppmまで,鉛は0.5 ppmまでの妨害が除去可能であった.本法は土壌認証標準物質の定量に適用された.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2010
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