分析化学
Print ISSN : 0525-1931
総合論文
水系液体クロマトグラフィー分離場における水の状態と分離選択性
渋川 雅美
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2006 年 55 巻 3 号 p. 149-162

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抄録

液体クロマトグラフィー(LC)用カラム充填剤として市販されている種々の親水性及び疎水性高分子ゲルを対象とし,ゲルに取り込まれた水の状態を,ゲルの持つ溶質分離選択性との関係に着目してLCと示差走査熱量測定法(DSC)により検討した.DSC測定の結果,ゲル中の水は不凍水,中間水,自由水の3つの状態に識別された.一方,独自に開発したLC移動相体積測定法により,ゲル中で固定相として機能する水,すなわち分離媒体として機能する水の量を求め,これらの状態の異なる水の量と比較したところ,親水性ゲルは不凍水と中間水が共に固定相として機能しているものと不凍水のみが固定相として機能しているものの2つに大別できることが明らかになった.これに対して,疎水性ゲル(ポリスチレン-ジビニルベンゼン共重合体ゲル)では固定相として機能する水が存在しないことが分かった.種々の有機化合物をプローブとしてそれぞれのLC系の分離選択性を調べ,ゲル内の水の状態とゲルの構造とを考察した.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2006
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