分析化学
Print ISSN : 0525-1931
海水中のppbオーダーのクロム(VI)の溶媒抽出濃縮-原子吸光定量
海水,河川水中の微量有害物質の原子吸光光度定量法(第4報)
日色 和夫応和 尚Mercedes TAKAOKA田中 孝川原 昭宣
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1976 年 25 巻 2 号 p. 122-127

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抄録

クロム(III)の共存する海水中の微量クロム(VI)を定量するため,クロム(VI)をジエチルジチオカルバミン酸塩としてメチルイソブチルケトンに溶媒抽出し,アセチレン-空気フレームあるいは黒鉛炉による原子吸光法で測定する方法を提案した.
クロム(VI)の抽出はpH5で最大であるが,クロム(III)の影響がないpH4で抽出した.最適のジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム濃度は,水相中のクロム(VI)濃度0.5ppmについて2.0×10-3Mである.水相の容量を100,200,300,500及び1000ml,有機相の容量を10,15,15,20及び30mlとした場合,いずれも直線の検量線が得られ,水相の容量が多くなると感度はほぼ直線的に向上することが分かった.水相と有機相の容量が1000mlと30mlの場合の感度は,フレーム法で1%吸収当たり0.4ppbのクロム,フレームレス法で0,02ppbである.
10ppmのストロンチウム(II),1ppmのバリウム(II),10ppbの銅(II),鉛(II),亜鉛(II),カドミウム(II),水銀(II),ニッケル(II),ヒ素(III),マンガン(II),コバルト(III),ベリリウム(II),アルミニウム(III),鉄(III),モリブデン(VI)の共存は,1.0ppbのクロム(VI)の定量を妨害しない,本法で合成海水及び数種海水試料中のクロム(VI)を定量した.更に海水試料に一定量のクロム(VI)を添加し,クロム(VI)を定量したところ,満足すべき回収率が得られた.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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