林業経済研究
Online ISSN : 2424-2454
Print ISSN : 0285-1598
自然資源管理において制度化がもたらす市民活動への影響
鎌倉広町緑地の指定管理者選定過程を事例として
平原 俊 土屋 俊幸
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2017 年 63 巻 3 号 p. 53-64

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抄録

自然資源管理を行う市民活動に対する期待が高まっており,草の根レベルの活動が徐々に制度化されるようになっている。本稿では,この制度化が市民活動に及ぼす影響を具体的に明らかにすることを目的として,神奈川県鎌倉広町緑地における指定管理者制度の選定過程について分析を行った。当該フィールドにおいて精力的な管理活動を行っていた「鎌倉広町の森市民の会」は,2014年度の選定過程で組織体制の不備と管理技術の欠如を理由に不指定となったが,公園管理業務の実績を有する団体からバックアップを受けることなどで対応を図り,翌年度,指定管理者となることが決定した。分析の結果,制度化には組織体制の脆弱さを改善する正の側面とともに,組織としての「制度的同型化」や個人としての「楽しみ」の喪失といったように,自然とのかかわりを単一化させる負の側面もあることが確認された。これら正負の側面のトレードオフ問題を乗り越えるためには, 各団体・各個人がそれぞれの目的を果たすことを目指しながら, その総体として緩やかに自然資源管理を行っていくことが必要であると考えられた。

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© 2017 林業経済学会
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