IAAの生合成経路は現在4種類あるとされ、なかでも、IAAの前駆物質であるインドールアセトニトリル(IAN)を経てIAAを生成する経路はアブラナ科およびその近縁種に特異的であるとされている。しかし、浅野ら(1993)はホウレンソウ(アカザ科)、黒岩ら(1993)はカボチャ(ウリ科)でその存在を示唆し、浅野はホウレンソウの生育とIAN含量の季節的変化を検討し、冬に多く、夏に少なかったとしている。ホウレンソウは栽培時期によって形態が異なり冬季のホウレンソウは葉柄短く、葉身が大きいのに対し、夏季のホウレンソウは葉柄長く、葉身が小さいのが特徴である。これは温度、日長が関係していることは勿論であろうが、伸長生長を促進するオーキシンの作用も大きく、それには季節的含量の変化を示すIANの存在も大きく関わっていると考え、ホウレンソウの生育に対するIAA、IANの相互作用について検討した。