2017 年 55 巻 1 号 p. 15-27
本研究は,1996年から始まり,その後拡充されてきた警察による犯罪被害者政策に焦点をあて,これらの取り組みが遺族の評価にどのように反映されているのかを検討した。調査では,交通事犯や殺人などの遺族244名から協力を得て,「情報提供」「配慮」「捜査」の観点につき,担当警察官に対する評価を求めた。主要な2つの政策の導入年によって期間を3区分し,事件発生年にもとづいて遺族をいずれかに振り分けた上,この3群間で比較したところ,被害者政策が進むほど,上記3つの観点における遺族の評価は好転していることが示された。さらにこれらの評価は,警察官に対する遺族の信頼を促進するとともに,警察官への信頼を媒介して,遺族の心理状態や司法制度一般への信頼をも好転させうることが示された。