日本精神保健看護学会誌
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再入院予防を目的とした精神障害者への看護ケアの実態
宇佐美 しおり中山 洋子野末 聖香藤井 美香大井 美樹
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2014 年 23 巻 1 号 p. 70-80

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抄録

本研究は,退院後早期の再入院予防のための急性期治療病棟および退院後のケアを明らかにすることを目的とした.入院中,退院後の看護ケアを疾病ごとに抽出し,質的な内容分析を行った.ケア対象者である患者の平均年齢は47.4歳,発病からの期間は11.5年であった.ケア提供者である看護師は24名で平均年齢41.1歳,看護師の平均経験年数14.5年,精神科看護の平均経験年数は,10.2年であった.分析の結果,統合失調症,気分障害患者双方に抽出された看護ケアは,<退院後の安定した生活を意識しリソースを活性化する><地域生活を維持するために必要な在宅での安全・安心なケアを提供する>で,統合失調症患者には症状管理やセルフケアの獲得支援に関する支援が,気分障害患者には,うつ状態に関する自己理解を促進する支援が行われていた.本研究結果から,退院後早期の再入院予防のためには,急性期入院治療中から退院後まで継続的な症状の自己管理支援,危機時の速やかな介入,多職種による有機的連携強化が重要であることが示唆された.また,退院後3か月未満で再入院した患者と再入院しなかった患者の入院中の看護ケアの違いは見いだせなかった.すなわち,患者のこれまでの入院の仕方・地域での生活の仕方,患者の疾患,再入院の理由などを理解した個別的な看護ケアが十分に展開されているとはいえず,この区別が課題として残された.

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© 2014 一般社団法人日本精神保健看護学会
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