太成学院大学紀要
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在日コリアン高齢者・日本人高齢者の抑うつに関する比較研究
文 鐘聲三上 洋
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2008 年 10 巻 p. 113-120

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抄録

高齢者における抑うつは、老年症候群のひとつとしてQOLを低下させる大きな要因である。本研究は、都市部在住日本人及び在日コリアン高齢者のADL、QOL、既往歴等を比較し、抑うつに関連する要因の特徴を明らかにすることを目的とした。2004年11月〜2005年1月に大阪市内A地区在住の65歳以上の高齢者494人を対象とした。日本人における抑うつ者の割合は16.6%、在日コリアンでは41.8%であった。両群ともに抑うつ群は、平均年齢が高く、生きがいがないものが多く、閉じこもり傾向があった。また、介護保険利用者も多く、ADLは抑うつ群の方が低く、主観的健康感も低かった。在日コリアンの抑うつ群に特有に見られた特徴として、就学年数が低く、生活習慣病の罹患が高く、独居者が多いという結果が見られた。また、抑うつに影響を及ぼす因子として、日本人高齢者は「生きがい」、「Basic ADL」が、在日コリアン高齢者は「転倒」、「主観的健康感」が挙げられた。従来の抑うつに関する対処に加え、民族的背景の相違をより明らかにし、疾病コントロールを含めた、集団に合わせたヘルスプロモーションの方策が必要であると示唆された。

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© 2008 太成学院大学
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