日本健康医学会雑誌
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2型糖尿病患者に対するトランスセオレティカルモデルに基づく栄養指導の効果における罹病期間並びに指導頻度の影響
中川 幸恵森谷 [キヨシ]石川 祐一米代 武司武藏 学
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2015 年 24 巻 2 号 p. 103-113

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抄録

2型糖尿病患者に対する栄養指導効果は罹病期間が長くなるほど得られにくくなるが,指導頻度を高めることで病態改善効果を高めることができる。近年,糖尿病患者の栄養指導にトランスセオレティカルモデル(TTM)が取り入れられており,患者の行動変容ステージや自己効力感を高めるようにアプローチすることが重視されている。本研究では,糖尿病罹病期間と栄養指導の頻度が患者の食行動変容ステージや自己効力感に及ぼす影響を調べ,両値の変化とHbA1cの改善の関係を解析した。281病院に通院する2型糖尿病患者619名を対象とし,管理栄養士による栄養指導の開始時と6ヶ月後の臨床データを収集した.指導6ヶ月後には,食行動変容ステージ得点変化量と自己効力感得点変化量は罹病期間が短い群ほど,また栄養指導頻度が高い群ほど大きかった。さらに,6ヶ月の指導によるHbA1c減少効果は食行動変容ステージ得点と自己効力感得点が高まるほど得られやすかった。食行動変容ステージ得点と自己効力感得点の上昇量は,性別,糖尿病薬の変更,HbA1c初期値,罹病期間,栄養指導頻度とは独立してHbA1c改善の規定因子となった。TTMに基づいて行われる栄養指導は食行動変容ステージと自己効力感を効率的に高めることで病態改善を促すが,罹病期間が指導効果に影響することが示された。

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© 2015 日本健康医学会
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