保健医療科学
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特集
公衆衛生看護におけるジェネラリストの概念整理と国立保健医療科学院の役割
丸谷 美紀
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2018 年 67 巻 4 号 p. 340-349

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抄録

目的:本稿の目的は,各種資料に記述された公衆衛生看護の定義・理念・機能・役割等の内容から,ジェネラリストの概念を整理し,国立保健医療科学院に今後強化が求められる人材育成・研究について考察することである.

方法:公衆衛生看護関連の書籍,看護関連論文,看護関連学会及び職能団体の見解に記述されている公衆衛生看護の定義・理念・機能・役割等の記述から,分野を限定しない活動・広範囲な対象者等,ジェネラリストを表現していると筆者が判断した記述を抽出し,記述内容の類似性をとらえて分類整理した.

結果:公衆衛生看護関連の書籍11件,英文献 3 件,看護関連学会 2 件,関連団体 3 件,計19の資料を選定した.ジェネラリストに関する和文献は皆無だった.分析した結果,「全ての発達段階・健康レベルを看護の対象とする」「個人から国家レベルまでの規模を連動して看護の対象とする」「個別ケアから政策まで多岐に渡る方法を連動して公平に看護を提供する」「長期的視点に立った看護の提供」「幅広い学問分野を基盤とする」の 5 つに分類された.

結論:ジェネラリストに関する和文献が皆無だったことは,保健師がジェネラリストであることが自明とされてきた可能性もある.本稿で整理した内容のうち,「長期的視点に立った看護の提供」「幅広い学問分野を基盤とする」は,公衆衛生看護におけるジェネラリストの特徴と思われる.我国の喫緊の健康問題を鑑みると,今後,公衆衛生看護におけるジェネラリストには「多分野に渡る健康問題に対して予防的に支援する」技術の強化が必要と考える.

近年,国立保健医療科学院の役割は,保健師の「人材育成能力」の育成に移行しつつあり,今後は,「ジェネラリストを育成する能力」の強化が必要と考える.保健師のジェネラリストとしての暗黙知を明らかにし,形式知として人材育成に反映していく必要がある.国立保健医療科学院の役割遂行に向け,公衆衛生看護の人材育成開発に関する確立された部門の新設も一考と考える.

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© 2018 国立保健医療科学院
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