日本保健福祉学会誌
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エンパワメントを意図した高齢者の生活条件に関する研究
渕田 英津子
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2003 年 9 巻 2 号 p. 19-29

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抄録

目的 : 本研究は、エンパワメントを意図した高齢者の生活条件が高齢者の積極性、存在感の変化に与える影響を明らかにし、生き生きとした生活の維持・促進のための保健福祉サービスのあり方を検討することを目的とした。方法 : 1991年から現在まで継続している大規模コホート調査に参加し、その一部を再分析した。対象はT村在住の65歳以上876入で、エンパワメントを意図した生活条件として、(1)他者とのかかわり、(2)身近な社会参加、(3)社会への関心、(4)生活への安心感、(5)健康への関心の14項目の生活条件と4年後の積極性・存在感の変化の関係をX^2検定、統制要因を投入した多重ロジスティック回帰分析を用いて分析した。結果 : 1)270人から有効回答を得た。75歳未満210入(77.8%)、男性133人(49.3%)、積極性が維持・向上237人(87.8%)、存在感が維持、向上226人(83.7%)であった。2)ロジスティック回帰分析の結果、「地域活動への参加」、「本・雑誌の購読」、「緊急時相談者の有無」、「健康への配慮」の生活条件が高齢者の4年後の積極性に有意な関連がみられた。「家族との会話」、「健康への配慮」、「生活への配慮」が4年後の存在感に有意な関連を示した。3)関連がみられた変数を選択投入し、ステップワイズ法を用いた多重ロジスティック回帰分析により「地域活動への参加」、「緊急時相談の有無」、「健康への配慮」は積極性に、「年齢」、「家族との会話」、「健康への配慮」は存在感に影響を与えることが明らかになった。考察 : 1)積極性を低下させる生活条件として地域活動への参加がないこと、緊急時の相談者がないこと、健康への配慮がないことが明らかにされ、存在感を低下させる生活条件として家族との会話がないこと、健康への配慮がないことが明らかにされ、これらは高齢者が生き生きと地域で生活をするために重要な生活条件であることが示された。2)本研究の結果は、地域高齢者のエンパワメントを意図した生活支援条件、地域高齢者と家族や地域住民で相互支援する地域社会作り、保健福祉サービス専門職の支援体制に活用できよう。

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© 2003 日本保健福祉学会
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