2014 年 62 巻 7 号 p. 350-353
空気中に豊富に存在する窒素分子を切断して水素化し,人類生存に不可欠な窒素源であるアンモニアへと導くには莫大なエネルギーが必要である。100年前に開発された「ハーバー・ボッシュ法」により豊かな暮らしを得てきた私たちだが,一方でその代償として多くのエネルギー,つまり化石燃料を消費してきた。省エネ・省資源が叫ばれる昨今,多消費プロセスである本法に代わる新しい合成手法の開発が模索されている。本稿では,最近の分子性錯体を用いた温和な反応条件で進行する窒素分子の活性化について,その背景を含めて紹介する。