1990 年 15 巻 2 号 p. 113-118
Staphylococcus epidermidis の産生するslime中のproteaseが, Tリンパ球膜抗原CD2, CD3, CD4, およびCD8に対する作用とマクロファージ活性化因子(MAF)産生におよぼす影響について検討した。S. epidermidis slime protease(slime protease)処理によりTリンパ球CD2, CD4およびCD8とそれぞれに対するモノクローナル抗体の結合が阻害され, その結果, CD2, CD4およびCD8陽性細胞数はslime proteaseの用量に依存して減少した。また, phytohemagglutnin刺激によるTリンパ球からのMAF産生もslime proteaseでTリンパ球を処理すると, 用量依存的に抑制された。なお, 本実験でslime proteaseは, Tリンパ球に対し細胞毒性を示さなかった。
以上の結果から, slime proteaseによりTリンパ球が活性化されてできる活性物質MAFの産生は抑制されることが示された。このことはslime proteaseがTリンパ球膜抗原を分解して, 障害を与えることにより引き起こされたものと考えられる。