2016 年 50 巻 1 号 p. 27-39
本研究では採材方針の違いと森林の管理状態の違いによるスギ人工林の収益の変化を示した。対象地は新潟県村上市旧山北町の民有林とした。需要を反映した2通りの採材方針と,枝打ち回数を反映した4通りの森林の管理状態について,金員粗収穫を最大化する採材シミュレーションを行った。さらに地利級別に費用計算を行うことで森林純収益を算出した。その結果,安価な丸太の安定供給を望む需要先のみに販売する採材方針は,森林の管理状態による収益の差が小さく,リスク管理がしやすいという利点を持つ一方,それに加えて単価の高い高齢級大径材を購入する需要先にも販売する採材方針では,地位級と管理状態の条件の良い林分において収益性が有利となることがわかった。このように採材方針や地位級によって枝打ちの効用は大きく異なった。従って,適切な採材方針を選択し,かつ枝打ち回数を調整することによって将来の森林を望ましい管理状態に誘導するため,林業事業体は需要を正確に把握する必要があるといえる。