2014 年 52 巻 3 号 p. 391-401
本研究は,子育て支援に対するドイツの赤ちゃんポストと匿名出産の隠された意義について明らかにすることをねらいとする。ドイツで最初の赤ちゃんポストを設置したのがシュテルニパルクである。それだけでなく,この団体はドイツで最初の匿名出産を実施している。だが根本的には,彼らは幾つかの幼稚園を運営する地域の民間教育団体である。いったい彼らのねらいは何か。私が明らかにしたのは,子育て支援と赤ちゃんポストの連関だけではない。保育とシュテルニパルクの実践の連関についても明らかにした。本研究ではシュテルニパルクの思想的背景に迫る。その結果,シュテルニパルクの思想は新教育に基づいているが,また同時に,批判理論に基づいているということが示される。本研究の帰結として,シュテルニパルクは単に赤ちゃんポストを設置しただけでなく,新たな子育て支援の可能性を示したことを主張する。