1983 年 8 巻 3-4 号 p. 197-203
理科教育では,子どもたちに基礎的な科学的概念を無理なく理解させるために,認識上のつまづきをとりあげ,これを克服させる授業過程の研究が行われてきた。しかし,更に一歩踏み込んで,つまづきの原因となっている子どもの学力観,学習観については,かならずしも十分に研究されていない。情報化社会の子どもは,何でも実際に経験するよりも,まずそれに関する情報を集め,勉強はよい結果を得る技術と心得ているという。我々は,この視点に立って理科の授業を通して実態をとらえた。フリーカード法で,理科の教師から適切な課題を導き出し,ついで,この課題を克服させる授業を実践し,分析記録と生徒の自己評価を関連づけた。その結果,生徒は,(1)自分の観点を事象に照らして吟味する姿勢に乏しいが,(2)論理のための論理操作ができれば満足する。また,(3)自分では意味がわからなくてもモデル操作は正しくできるなど,子どもの学習観の一端が明らかになったので,報告する。