保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
市民参加型モニタリングとリモートセンシングとの統合的利用による海草藻場の空間動態の解析
吉田 正人河内 直子仲岡 雅裕
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2007 年 12 巻 1 号 p. 10-19

詳細
抄録

市民参加型モニタリングにより海草藻場の空間動態を正確に把握するためには、リモートセンシング等で得られる空間分布情報との比較解析により、データの精度および代表性を評価することが必要である。そこで、2004年1月から2005年1月にかけて日本自然保護協会によって沖縄島北東部で行われた市民参加型モニタリング(ジャングサウォッチ)と同時に無人観測気球を使って低高度・高解像度で撮影された海草藻場の空中写真を解析し、両方法の有効性を検討した。ジャングサウォッチと空中写真の解析は、調査期間中に頻発した台風に伴う撹乱による海草藻場面積の減少を同様にとらえており、両方法が藻場全体スケールおよび局所スケールでの時間変動を追跡するモニタリング手法として有効であることが明らかになった。ジャングサウォッチでは、空中写真では判別不可能な海草の種ごとの被度変化、および種多様性の変動も明らかにすることができた。一方、空中写真は面積1m^2以上の植生部(パッチ)の判別が可能であり、パッチの面積頻度分布や、パッチの消失率、形成率、連続植生部からの分断化などの変動プロセスを解析できた。ジャングサウォッチによる海草被度と、空中写真から判読した藻場の植被率の関係について、写真からの読み取り面積を段階的に変化させて、両者の相関係数を比較したところ、一部を除き有意な正の相関が認められた。しかし、読み取り範囲の変化に伴う相関係数の変化のパターンは、年により異なっており、これには、両年における海草藻場の全体の植被率や連続性の違いが関連している可能性が示唆された。市民参加型モニタリングと低高度・高解像度で撮影した空中写真の解析を統合的に行うことで、両方法の制約を克服した海草藻場の空間動態の様式およびそのプロセスの解明が進むことが期待される。

著者関連情報
© 2007 一般社団法人 日本生態学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top