1997年5月に,愛知県小牧市の小牧山においてスギの大量枯死が認められ,新聞紙上で枯死木から脱出したオナガキバチの加害がこの枯死の主因であると報道された.著者らはこの報道に疑問を感じ,このスギ枯死の原因を究明するために調査を行った.枯死木を観察したところ,楕円形の脱出孔およびハチカミ症状が認められ,スギカミキリが加害していたことが示唆された.また,枯死木を伐倒したところ木口面にニホンキバチの加害によると思われる星形の変色が認められるものが存在した.1998年に,粘着トラップによるスギカミキリの捕獲を試みたところ,多数のスギカミキリ成虫が捕獲された.以上のことから,この大量枯死の主因はスギカミキリの加害であると考えられた.スギカミキリの加害により衰弱した木に産卵したニホンキバチがその際に菌を接種し,その菌を利用してオナガキバチが生育していたものと考えられた.