ペドロジスト
Online ISSN : 2189-7336
Print ISSN : 0031-4064
三瓶山北の原のススキ草原とアカマツ林の黒ぼく土の特徴(ペドン・ペーパー)
増永 二之佐藤 邦明
著者情報
キーワード: 黒ぼく土, 三瓶山, 植生遷移
ジャーナル フリー

2014 年 58 巻 2 号 p. 72-78

詳細
抄録

島根県大田市の三瓶山北の原に分布する黒ぼく土の調査結果について報告する。北の原に広がるススキ(Miscanthus sinensis)草原(草原)とアカマツ(Pinus densiflora)林(マツ林)で試坑調査と試料採取・分析を行った結果,マツ林では黒色から黒褐色の暗色の土層が0-50cmあり,草原の同様の土色の土層よりも10cm程度厚かったが,マツ林への植生の遷移による明瞭な黒ぼく土表層の退色化は確認されなかった。草原の方が暗色の層の厚さは薄かったが,TC含量の分布より草原の方が深い層まで有機物を集積していることが示された。TC含量が高い層で交換性K,Mg含量は高く,交換性Caは草原の表層で高かった。これらの結果は,植生の変化に伴って土壌に供給される有機物の量や質が変わり,上述の土壌特性を変化させていることを示唆していた。調査した全層位でpH(NaF)は9.2を超えていた。また,リン酸吸収係数は草原のA1〜A3層とAB層(0-40cm)およびマツ林のA1〜A3層(0-35cm)で1500mg P_2O_5 100g^<-1>を超えていた。両地点とも表層0-20cmは日本の統一的土壌分類体系の「非アロフェン質黒ぼく層」に準ずる性質を有したが,厚さが25cmに満たず「典型アロフェン黒ぼく土」に分類された。包括的土壌分類第1次試案の基準では,草地では0-30cm,マツ林では0-35cmの層位で「非アロフェン質黒ボク特徴」の要件を満たし「普通非アロフェン質黒ボク土」に分類された。草原とマツ林ともに表層0-20cmは「非アロフェン質土層」の特徴を示し,表層での風成塵や有機物の蓄積,表層からの活性アルミニウム(Al_o)の溶脱の影響が推察された。

著者関連情報
© 2014 日本ペドロジー学会
前の記事 次の記事
feedback
Top