1991 年 13 巻 3 号 p. 325-329
ICUに入室対象となる症例は呼吸循環の予備力が低下しており, 内視鏡的に喀痰を吸引する場合に発生する低酸素血症や不整脈, 高血圧などの循環変動は特に危険である。安全性を高めるために, 従来は全身麻酔下に一時的に気管内挿管をして呼吸管理を行いつつ内視鏡操作を施行してきた。しかし気管内挿管はそれ自体, 循環変動なしに行うことは困難であり, さらに内視鏡操作の障害になりやすいこと, 内視鏡操作中の気道抵抗が増大するなどの欠点もあった。最近全身麻酔の呼吸管理に応用されはじめたラリンジアルマスクは調節呼吸が可能な新しいタイプのエアウェイで, 直接気管内に挿入されないことから挿入時の循環変動はより少なく, またチューブ部分の内径が太く全長も短いために内視鏡操作はより円滑で術中の換気も容易であるなどの利点がある。今回, ラリンジアルマスクを用いて3名のICU入室患者の内視鏡的喀痰吸引を試み, 良好な呼吸循環管理下に円滑な内視鏡操作を行うことが可能であった。