歯科医学
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口腔年齢指標による地域口腔保健評価
奥村 信三宅 達郎神原 正樹
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2003 年 66 巻 4 号 p. 279-288

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抄録

口腔年齢指標を地域保健評価に使用できるかどうかを知る目的で,口腔内状態を健全な歯と健全な歯周組織の状態で総合的に評価する指標である口腔年齢を用い,大阪府各地域での成人歯科健診結果に対し,地域口腔保健状態の評価を行った.口腔保健状態の評価は,各地域ごとの口腔年齢と実年齢との比較によって行い,口腔年齢が実年齢より若い場合を良好,同年齢の場合を標準,高齢の場合を不良とした.その結果,市内,府内とも,全般的に20〜30歳代の受診者は標準あるいは悪い傾向にあり,40歳以上の中高年受診者の口腔内状況は比較的良好である地域が多いことが明らかとなった.このことより,成人歯科健診事業における受診者の特性,すなわち若い年代では現在口腔内に問題を抱えている者が受診する傾向にあり,逆に高齢者では自分の口腔内に自信のある者が受診している状況が推察された.さらに,個人別に実年齢と口腔年齢の差を算出し,地域ならびに年代ごとの評価を行った結果,地域ごとの受診者の特徴や,地域全体の傾向などをより簡便に把握することができた.
このように,口腔年齢指標を地域の口腔保健状態の評価に用いた結果,口腔年齢が実年齢より高いか低いかといった単純な指標で口腔内状態を総合的に示すことができ,年齢構成の異なる地域間の格差やそれぞれの地域における受診者の特性を明確にすることができた.今後,歯科保健事業を実施するにあたり,問題点のある地域や年代,さらには受診者の特徴も考慮に入れた,より効果的な事業内容を構築するための指標として応用できることが示唆された.さらにこれらの結果をマップで表示することにより,地域全体の口腔保健状態や地域特性を一目で把握することが可能となった.

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© 2003 大阪歯科学会
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