日本作物学会紀事
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暖地のビール大麦の収量と気象条件の関係の統計的解析
浜地 勇次吉田 智彦
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1989 年 58 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

暖地のビール大麦の収量と気象条件の関係を知るために, 生産力検定試験の品種ごとの収量および収量関係形質(穂長, 穂数および千粒重)と気象要因(平均気温, 降水量および日照時間)との関係を変数増減法による重回帰分析法で分析し, 個々の気象要因との表現型相関および気象要因相互間の影響を取り除いて解析を行った. 1966~1980年のビール大麦の全生育期間の気象要因とビール大麦の6品種の収量との関係では, 表現型相関はおおむねどの品種ともに気温と降水量が収量と負の, 日照時間が収量と正の関係にあり, また降水量が穂数と負の関係にあった. しかし, 重回帰分析によると, 収量に対して有意な関係がある気象要因は降水量のみ(あまぎ二条を除く全品種)であった. 回帰係数からみると, 総降水量で1mm増えると収量が0.04~0.06kg/a減少することになった. 高温が減収に寄与しているようにみえるが, これは温度と降水量に正の相関があるためであり, 減収は主に多降水の影響によってもたらされた. 日照時間の影響は比較的小さかった. 収量関係形質では穂数が多降水で減少した. さらに, 出穂期を境にして気象要因を前期と後期に分けても, 減収は主に両時期の多降水によってもたらされた. したがって暖冬年には, 踏圧等によって生育を抑えることのみより, 暖冬にともなう多降水が真の減収要因であるので, 排水対策を中心とした栽培管理を行うことが極めて重要である.

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