日本作物学会紀事
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日印交雑稲および半矮性インド稲の籾数生産能率と登熟特性
山本 由徳吉田 徹志榎本 哲也吉川 義一
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1991 年 60 巻 3 号 p. 365-372

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抄録

多収性を示す日印交雑稲と半矮性インド稲各3品種と, 対照として日本稲10品種を供試し, 条間と株間が30cm(疎植区)と20cm(密植区)の栽植密度条件下で栽培して, 多収性水稲の籾生産能率と登熟特性について日本稲との比較において検討した. 1) 日印交雑稲と半矮性インド稲のm2当りの籾数は, 日本稲にくらべて著しく優り, 疎植区4.23~5.65万粒, 密植区4.27~6.09万粒であり, それに伴って収量水準も高かった(疎植区:626~915, 密植:635~981kg/10a). 各品種のm2当り籾数の多少は, 穂数よりも1穂籾数の, また1穂籾数は2次枝梗着生籾数の多少と密接に関係していた. 2) 出穂期の葉面積当り, および地上部吸収窒素並びに乾物重当りの籾数生産能率は, いずれも日本稲にくらべて日印交雑稲および半矮性インド稲で明らかに高かった. そして, シンク (籾数×1籾殻重)/ソース比(出穂期の葉面積当りのシンク量)は, 1穂籾数と非常に高い有意な正の相関関係を示した. 3) m2当り籾数と登熟歩合との間には, 日印交雑稲と半矮性インド稲, および日本稲の2つの品種群別にみると, いずれも有意な負の相関関係が認められた. この籾数増加に伴う登熟歩合の低下は2次枝梗着生籾数の増加に基づくが, 日印交雑稲および半矮性インド稲では, 日本稲にくらべて同一の2次枝梗着生籾数水準における登熟歩合は高かった. 4) 以上より, 日印交雑稲や半矮性インド稲では大きな穂によって面積当りの籾数の確保を実現しており, その結果, 2次枝梗着生籾数が多くなるにも関わらず登熟歩合の低下程度が小さく, それによって多収を実現しているものと考えられた.

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