産業衛生学雑誌
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定期健康診断受診労働者における健康診断成績の記憶の正確さに関する心理社会的検討 : 第2編 定期健康診断成績の長期記憶について
入江 正洋永田 頌史宮田 正和池田 正人平山 志津子
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1998 年 40 巻 3 号 p. 75-84

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抄録

定期健康診断受診労働者における健康診断成績の記憶の正確さに関する心理社会的検討 第2編 定期健康診断成績の長期記憶について : 入江正洋ほか.産業医科大学産業生態科学研究所精神保健学-製造業関係の某事業所職員に対して, 1993年度の健診結果通知後1ヶ月の時点で, 異常があったと記憶している健診項目分類や異常結果に対する対応, 1992年度の健診結果の記憶, 健診結果の記憶の正確さに対する自信, 健診の有用性などからなる自記式質問紙調査を施行した.そして, 333名(男性253名, 女性80名)を対象として, 1992年度の実際および記憶上の結果と1992年度の結果の1年後の記憶との関係や, その間の健診外検査結果による1年後の記憶への影響, 1992年度の実際および記憶上の結果が1993年度の健診結果通知1ヶ月後の記憶に及ぼす影響, 健診結果の正確な記憶に対する自信や健診の有用性, ならびに異常結果説明の有無と1993年度の健診結果通知1ヶ月後の記憶の正答率との関係, などについて検討した.その結果, 1992年度の健診結果通知1ヶ月後に比べて1年後の記憶の正答率は有意に低く, 結果が異常である場合や異常項目数が多いほど正答率が低下しやすいことが示唆された.健診外検査は1年後の記憶に多少影響を与えていた.また, 1992年度の記憶上の結果の方が実際の結果よりも, 1993年度の健診結果通知1ヶ月後の記憶に与える影響が有意に大きかった.職員の健診結果の記憶に対する自信は, 健診結果の記憶や異常結果に対する対応の記憶の正答率からみて不確かであり, 大多数の職員に健診が有用との認識があるにもかかわらず, 健診結果および異常結果に対する対応の正確な記憶には反映されていなかった.その他, 1993年度の異常結果説明群の方が未説明群よりも, 一部一致の増加を主とした結果の記憶の正答率が有意に高く, 結果説明の効果が示唆された.

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© 1998 公益社団法人 日本産業衛生学会
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