1995 年 103 巻 5 号 p. 429-446
南米大陸の熱帯雨林に生息する広鼻猿類の系統進化に関する研究は, ここ十数年の相次ぐ化石種の発見と分子生物学的手法の発展により飛躍的に進展している。現在の主な論点は, マーモセット類•サキ類•クモザル類 (ホエザルを含む) の大きな3つのグループと, 残りの4属 (リスザル•ヨザル•ティティモンキー•オマキザル)との系統的な関係である。特に後4者の系統的な位置に関しては, 古生物学的な解析,現生種の形態学的解析, 分子生物学的解析のいずれも決定的な結論を出すに至っていない. 広鼻猿類の進化の初期段階で, 非常に短い時間に急速に互いに分岐したのではないかと思われる。