2023 年 47 巻 1 号 p. 127-139
授業中における教師の認知負荷の変動を,皮膚コンダクタンス変化と末梢皮膚温の変動によって把握することの可能性の検討を目的とした研究を行った.複数指標を同時に,時系列的に測定可能なデバイスを教師が着用して授業を実施した.対象は小学校教師5名であり,授業は複数学年,複数教科で実施した.皮膚コンダクタンス変化と末梢皮膚温の変動と,同時に計測された身体の動きの大きさ,質問紙を用いた主観的評価,授業ビデオを用いた振り返りによる口頭での状況の説明や感情状態の内省報告との関係を検討した.その結果,皮膚コンダクタンスと末梢皮膚温の測定値は身体の動きの大きさの影響を受けにくく,様々な身体の動きをとる授業中の教師を対象とした連続測定が可能であることが示された.そして,皮膚コンダクタンスの上昇と末梢皮膚温の低下が見られた授業場面は,教師にとって認知負荷がかかった場面であると解釈できることが示された.