理学療法学
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道路横断に必要な歩行速度と下肢筋力の関連
―高齢入院患者における検討―
大森 圭貢山﨑 裕司横山 仁志青木 詩子平木 幸治笠原 美千代
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2001 年 28 巻 2 号 p. 53-58

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抄録

日本の道路横断には1.0m/secの歩行速度が必要である。本研究では,この歩行速度獲得に必要な下肢筋力水準について検討した。対象は,65歳以上の高齢入院患者208名(男性113名,女性95名),年齢74.7 ± 6.2歳である。これらの症例に対して年齢,身長,体重,Body Mass Index,下肢筋力,歩行速度を調査,測定した。下肢筋力は,60deg/secの角速度での膝伸展ピークトルク値と,膝屈曲60度位での等尺性脚伸展筋力を測定し,体重比を算出した。歩行速度は,訓練室内で速歩による10m歩行時間を測定し,算出した。そして歩行速度が1.0m/sec以上をFast群,1.0m/sec未満をSlow群として分類した。次に,歩行速度に独立して影響を与える因子についてロジスティック解析を用いて分析した。説明変数は,年齢,身長,Body Mass Index,膝伸展ピークトルク,脚伸展筋力とした。また,下肢筋力水準別にFast群の占める割合を算出した。その結果,歩行速度に独立して影響を与えている因子は膝伸展ピークトルク及び脚伸展筋力のみであった。膝伸展ピークトルクが0.50N・m/kg未満,及び脚伸展筋力が0.60kg/kg未満の症例では,Fast群の症例を認めなかった。一方,膝伸展ピークトルクが0.90N・m/kg以上,及び脚伸展筋力が1.10kg/kg以上の症例は,全例がFast群であった。高齢入院患者が道路横断に十分な歩行速度を獲得するためには,ある一定以上の下肢筋力を有する必要がある。

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© 2001 公益社団法人 日本理学療法士協会
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