理学療法学
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糖尿病性足部潰瘍の危険因子に対する装具療法の効果
河辺 信秀上甲 哲士松波 優一山坂 奈奈子田伏 友彦廣瀬 典子庄田 昌隆石井 當男
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2004 年 31 巻 5 号 p. 296-303

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抄録

近年,糖尿病性足部潰瘍を原因とする下肢切断が増加している。我々は,糖尿病性足部潰瘍の危険因子である足底圧異常と,足底脱脂に及ぼす装具療法の効果を検討した。対象は,知覚神経障害が認められた2型糖尿病患者12例23肢である。全例に装具を作製し,非装着時と装着時に足底圧計測と歩行能力の評価を行い,さらに,装具装着継続が足底脱脂に及ぼす影響を調べた。また,脱脂の改善度により2群に分類し,足底圧を比較した。装着時に最大足底圧,前足部と鍾部の最大圧が有意に減少した。前足部最大圧に対する足趾部最大圧の比は有意に上昇し,圧分布異常が改善した。最大足底圧部位が前足部に存在する例は装着時には減少した。歩行能力には有意な変化はなかった。装具療法前,足底脱脂は9例(17肢)に認められ,すべて前足部に存在していたが,装具療法を148.3 ± 50.5(mean ± SD)日間継続した場合,2肢で「消失」,11肢で「改善」,および4肢で「変化なし」と判定された。「悪化」の例はなかった。「消失」,「改善」を改善群,「変化なし」を非改善群として比較した場合,非改善群では改善群に比べ最大足底圧が高く,これが脱脂の治癒を妨げたと推測された。以上の結果から,装具装着は足底圧を軽減し,かつ圧分布異常を改善し,そして足底脱脂を予防しうることが示唆された。装具療法は糖尿病性足部潰瘍に対する予防効果を発揮すると考えられる。

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© 2004 公益社団法人 日本理学療法士協会
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