2012 年 4 巻 1 号 p. 95-107
本論文は海外拠点における生産システムの進化について分析している。既存の多国籍企業の研究では、本国で獲得した優位性を移転することで企業が海外展開を行うと考えられてきた。特に日本企業の海外移転の研究においては日本的生産システムを優位性とみなし、本国工場の生産システムをどのように海外に持ち込むかが議論されてきた。本研究では、現代自動車の中国における生産移転を事例にし、海外生産システムの進化について分析する。現代自動車は国内で環境制約のために実現することができなかった生産システムの理想を中国の北京現代工場で実現させた。生産システムを移転するとき、そのあるべき姿を本国の工場に限定するのではなくそれ以上を目指すこと、そのために本国の工場との関係を一定部分で断絶することで、海外拠点における生産システムが進化し得るのである。