物体の所望の色信号を強調するために,特定の波長を強調した光源を「機能性光源」と呼ぶ.食品の分野では,これまで肉や魚などの生鮮食品の嗜好性向上を目的として,機能性光源の研究や開発がされてきた.本研究では,全世界で消費されており,種々の種類を有する乳製品のチーズを対象とした機能性光源の設計を目的として,照明がチーズの嗜好性に与える影響を反射光から解析した.10種類のナチュラルチーズの分光反射率を測定し,分光反射率形状と色分布に基づいて,合計5種類のチーズを解析対象とした.評価実験では,色温度と照度を固定したメタマーな照明を設計してチーズに照射し,その嗜好性を基準照明に対する相対評価として5件法で評価した.チーズが好きと回答した被験者4名をA群とし,残り4名をB群とした.実験の結果,A群は特定の照明下のチーズを好み,安定した評価が得られた.さらに,A群の評価を解析した結果,反射光が特定の色度領域に入る制約条件のもと,嗜好性と相関のある波長帯を制御することによって,チーズ好きの人の嗜好性を向上する照明を設計できる見通しが得られた.