2018 年 42 巻 3+ 号 p. 91-
街並み形成のデザインに役立つ汎用性の高い誘目性の指標について改善の指針を見出すことを目的としている. 誘目性に影響する主要因として,順応輝度,離角(中心視からの偏心角),色の三属性の差,対象の配色,大きさ,形状がある.本研究では,離角と色の三属性の差に着目し,モニタを使用した一対比較法(浦の変法)で被験者実験を行った.具体的には, 均等色空間(CIECAM02)において,背景と視標の色差を系統的に調整した刺激を用いて,5°, 15°, 30°, 45°の4離角を実験変量として採用した.その結果,信頼区間95%における色の目立ちの主効果に有意な差が認められ, 中心視近傍と周辺視では色の目立ちの傾向が異なることが明らかになった.特に30°と45°の間でHJCともに顕著な差異が認められた.さらに,解析結果より左右の位置効果が離角5°で有意であり,同じ刺激の組み合わせでも左に位置する場合の評点が高くなるとことが確認できた.これらの結果から,誘目性の検討は色の属性単体で定性的に判断するのではなく,背景と対象の色差を定量的に検討し,対象を見る人を起点とした位置をも考慮する必要性を示した.