1995 年 44 巻 7 号 p. 670-677
1992年2月から4月まで Burkard型花粉捕集器にて空中花粉抗原を採取しモノクローナル抗体を用いたイムノブロット法で Cry j Iスポットを発色させ粒子径別にカウントした. これを同時に採取し形態学的にスギ花粉と同定した花粉数と比較した. Cry j Iスポットのうち粒子径が50μm以上のもの (large spot) も50μm未満のもの (small spot) もそれぞれスギ花粉数と有意の正の相関 (r=0.729, r=0.586, p<0.001) を認めた. 風向の影響は, 富山市においてスギ花粉数は南東の風向の時に他の風向に比べ有意に多く, large spot も同様に南東の風向の時に多かったが small spotは風向間での差が小さく, 風向と浮遊量はあまり関係ないと考えられた. また同じ風向区分のなかでの検討では風速とはスギ花粉数, large spotともに有意な相関は認められなかった. 主にスギを植林した人工林は富山平野を南から取り囲むように存在しているため, この平野のほほ中央に位置する観測点では南風の時に飛散が多くなったと考えられたが, 破砕された小さいCry j I粒子と考えられる small spotは, 風向による影響を受けにくいと考えられた.