植生学会誌
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原著論文
管理放棄により樹林化した草原跡地における埋土種子相からみた草原生植物の再生可能性
井上 雅仁高橋 佳孝
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2020 年 37 巻 1 号 p. 27-35

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抄録

1. 管理放棄により樹林化した草原跡地など,管理と放棄の履歴が異なる場所を対象として埋土種子相を調査し,埋土種子からの草原生植物の再生可能性について検討した.

2. 地上植生のうち,高さ2 m以上の立木については,「草-林区」ではクロマツのBAが最大で,幹数はクロモジが最多であった.「林-林区」はウリハダカエデ,イヌシデのBAが大きい林分であった.下層植生については,「草-草区」ではススキの出現頻度,優占度が高く,その他ワラビ,トダシバ,ネコハギ,ニオイタチツボスミレなど,草原生種が高い頻度で出現した.「草-林区」「草-林区」では,クロモジの出現頻度,優占度が高かった.

3. 土壌サンプルから出現した植物は,「草-草区」で12種,「草-林区」で6種,「林-林区」で14種であった.そのうち草原生種は,「草-草区」では8種と多く,「草-林区」では1種のみ,「林-林区」では3種であった.土壌からの発生頻度の高い種は,「草-草区」ではアリノトウグサ,ススキ,コナスビ,オオチドメ,ニガナなど,「草-林区」ではアリノトウグサ,コナスビ,ヒサカキなど,「林-林区」ではコナスビ,イワガラミ,スズメノヤリ属の一種,ウツギなどであった.

4. かつて草原であった「草-林区」の土壌サンプルからは草原生植物の発生が少なかったことから,埋土種子からの草原生植物の再生は困難なことが示唆された.

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