医学検査
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
原著
Bayesの定理に基づく検査後確率を利用した日常診療における前立腺特異抗原測定の臨床的意義
村越 大輝久住 裕俊小杉山 晴香雨宮 直樹薗田 明広吉村 耕治西尾 恭規島田 俊夫
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 65 巻 4 号 p. 381-386

詳細
抄録

前立腺癌の罹患率・死亡率は年々増加し,早期診断のためにもPSA測定によるスクリーニング検査の実施は不可欠である。しかし,偽陰性による前立腺癌の見逃し,偽陽性による過剰診断といった問題点があり,前立腺癌と前立腺肥大症の鑑別は困難である。本研究では下部尿路症状を主訴に外来を受診し,前立腺生検を行い,前立腺癌と非前立腺癌の鑑別を病理組織診断により確定し得た患者を対象にROC解析を行い,日常診療におけるPSA測定の有用性を,Bayesの定理を用いて検討した。ROC解析の結果,カットオフ値は15.0 ng/mL,AUCは0.73であった。検査前確率を50%と想定した場合,Bayesの定理に基づいた条件付きの検査後確率は85%まで改善することが判明した。しかし,カットオフ値が4.0 ng/mLの場合,効果的な検査後確率の上昇は認められなかった。すなわちPSAの応用に関しては予防医学と臨床現場との棲み分けを明確に区別し,若年者には予防医学的側面からのアプローチを重視し,高齢者には臨床を重視したアプローチを優先するといった使い分けを行うことでPSA測定の臨床的有用性を効率的に高めることが可能になると考える。したがって,Bayesの定理を用いることで,PSA測定の正当性が明確に評価されると考える。今後,様々な分野における評価法の一つとして広くこの解析法が応用されることを期待する。

著者関連情報
© 2016 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
前の記事 次の記事
feedback
Top