昭和医学会雑誌
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慢性肝疾患患者同一血清における肝線維化代謝産物の臨床的意義
児玉 秀文青木 明梅田 知幸水野 幸一米山 啓一郎竹内 治男小貫 誠八田 善夫
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キーワード: 慢性肝疾患
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1991 年 51 巻 6 号 p. 612-619

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抄録

肝疾患において不可逆的な変化を来す原因の一つに肝線維化があり肝の形態変化のみならず機能にも影響を与える.したがって慢性肝疾患の病態を知るうえで肝線維化を把握することは重要である.そこで非活動型慢性肝炎 (CIH) , 活動型慢性肝炎 (CAH) , 肝硬変 (LC) , 肝硬変合併肝細胞癌 (HCC) に於ける同一血清中のtype IV collagen 7S-domain (7S) , type III procollagenN-peptide (P3P) , type I procollagenC-peptide (PIC) とprolyl hydroxylase (PH) 濃度を測定しその臨床的有用性を検討した.RIA法で測定した7Sの濃度は平均±SDで各疾患それぞれ5.06±1.55ng/ml, 6.98±2.41, 10.42±2.69, 12.2±3.62であった.IRMA法によるP3P濃度は, 8.06±3.82u/ml, 12.61±4.93, 15.12±4.31, 17.05±5.38であった.EIA法によるPICは, 847.3±142.2ng/ml, 1258±356.8, 1106±295.9, 1164±412.0, EIA法によるPHは60.06±11.74ng/m1, 57.58±14.43, 60.24±15.03, 82.31±55.20であった.同一血清7S, P3P濃度の平均値は, 組織学的に肝線維化の強くなる順にCIH, CAH, LC, HCCと高くなり有意差 (P<0.01) を認めたが, LCとHCCとの間には有意差はなかった.7Sは, LCとHCCで全例異常高値を示すが10ng/ml以上を示す例はHCCに多かった.P3Pは, CIHを除き測定域が大きかった.P1Cは, CIHで全例正常値をしめしCAH, LCとHCCより有意に低く (P<0.01) , CAHが一番高い傾向にあった.PHは, HCCで高い傾向にあるものの各群間には有意差は認められなかった.肝の線維化マーカーとしては7Sの陽性率が一番高く肝線維化をよく反映し, P3PとP1Cはこれに加え炎症壊死の要素が加わりCAH, LC, HCCの鑑別がっきにくかった.今回測定した線維化マーカーは, 血清濃度が高い場合には肝硬変をさらには肝細胞癌の存在も考慮すべきであると考えられた.今回の検討から血清PHの測定は, 各群間に有意差がなく臨床上有益でないと考えられた.各線維化マーカーは一般臨床検査とは一定の相関関係にはなかった.7S, P3PとP1Cは, 互いに相関関係がなく各々独立した線維化パラメーターと考えられ血清測定値の意味づけは多少異なるものと考えられた.以上より7Sは, 肝の組織学的線維化の程度に相関し, P1Cは肝の線維化の程度より肝細胞炎症壊死による線維合成を, P3Pは両者を反映しているものと考えられ, さらには肝細胞癌の存在は肝での線維合成の亢進を招来しているものと考えられた.

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