昭和学士会雑誌
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原著
性的マイノリティに対する大学生の意識と態度:第5報
—これまでの調査の共通設問の回答の比較—
小倉 浩正木 啓子須長 史生
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2022 年 82 巻 6 号 p. 470-491

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抄録

本稿は,2016年度以降毎年継続して実施している「インターネットを活用したセクシュアル・マイノリティに関する学生の意識調査」の結果報告の第5報である.この調査は,18歳〜20歳代前半の人々の,性的マイノリティに対する意識や態度を明らかにする目的で企画,実施してきたものである.今回報告する2020年度の調査においても,調査対象はこれまでの4か年と同様にA大学1年次在学生とした.これまでの4か年の調査では,回収率約80〜90%程度の回答を得ていたが,2020年度調査における回収率は30%程度と急減した.要因は,実施時の協力要請を対象者に直接呼びかけることができなかったためであると考えられる.それゆえ今回の調査研究はこれまでとは異なり限定的な解釈をする必要がある.なお各設問に対する単純集計結果,これまでの複数回の調査結果から読み取れる性的マイノリティに対する意識・態度の変化の傾向,ジェンダー別の回答傾向について,その主要な結果を列挙すると以下となる.・単純集計結果より,性的マイノリティに対する接触機会は過去の調査と比較して最も多く,知人または同じ大学の人が性的マイノリティである場合の嫌悪感は最も低く,共感的態度が増加傾向を示していることが明らかとなった.・性的マイノリティに関する正しい知識を習得したいという意欲をもつ回答者の割合は,増加傾向を示していることが明らかとなった.・2017年度〜2020年度の4か年分に渡って共通の設問回答に対して主成分分析を実施した結果,第1主成分(単純ホモフォビア成分)および第2主成分(パターナリズム成分,従来表層的共感成分と呼んでいた成分)の主成分得点は,一貫して減少傾向を示していることが明らかとなった(呼称を変更したことについては本文にて後述).・性的マイノリティに関する知識を問う「日本では戸籍上の性別を変更することができる」という設問の正答率が明確に減少傾向にあること,性的マイノリティに対する共感度の男女差が固定もしくは拡大傾向にあることが明らかとなった.

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